菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『パペットマペット 牛蛙祭り』

パペットマペット活動10周年記念ライブ「牛蛙祭り」 [DVD]パペットマペット活動10周年記念ライブ「牛蛙祭り」 [DVD]
(2009/03/18)
パペットマペット

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そういえば、彼らの存在を僕はとても当たり前に受け入れていたような気がする。考えてもみれば、かなり独特の存在感である筈なんだけどね。黒い覆面を被った謎の男を背景に、ショートコントを繰り広げるウシくんとカエルくんの名コンビ。どうしてウシ? どうしてカエル? そんな疑問を感じることなく、ただ笑える存在として捉えられた当時の自分の鈍感さに、ちょっとだけ苦笑い。いや、見た目の強烈な印象よりも、芸の達者さが目立っていたということなのかもしれない。実際、彼らは当時から面白かった。そして、今でもしっかりと面白い。

そんなパペットマペットが、活動十周年を記念した単独ライブを行ったという。あのスタイルで十年も続けてきたということにも驚いたが、それ以上に、活動十周年を記念した公演を行ったということに驚いた。見た目通り、アンダーグラウンドな土壌を中心に活動してきたパペットマペットは、今回の様な活動○周年記念ライブというタイプの催し物をしないだろうというイメージがあったからだ。考えてもみれば、パペット人形を扱ったピン芸人としてではなく、あくまでもウシくんとカエルくんのコンビであるという設定を貫き続けているパペットマペット実はかなり、真面目な性格なのかもしれない。

パペットマペットというと、やはりショートコントというイメージが強い。事実、『爆笑オンエアバトル』で披露したネタの多くはショートコントだったし、R-1ぐらんぷりの決勝戦で披露したネタもやはりショートコントだった。しかし、今回のライブでは、ショートコントを一切封印(※特典映像のみに収録)。長めのコントを六本、本編で披露している。例えば、カエルくんがアルバムで自分の人生(蛙生?)を振り返る『カエルのアルバム』だとか、カエルくんが落語に挑戦する『落語』だとか。しっかりとパペットマペットらしさを滲ませた、独特の世界観のコントを展開させていた。ちょっとモニターネタ多め?

中でも印象に残ったのが、『かくれんぼ』というコント。ウシくんとカエルくんがかくれんぼをするだけのコントなのだが、二匹がパペット人形であるということを最大限に利用しているのである。ウシくんとカエルくんのコンビという設定にこだわりつつも、時たま、実はパペット人形であるという事実にさりげなく触れているのだ。パペットマペットが十年も活動を継続することが出来たのは、そんな真面目だけれど凝り固まらない柔軟な発想があったからなのかもしれない。何気にパペットマペット、単独DVD何枚も出してるし。人気もあるようだ。

活動十周年を迎えるも、まだまだネタの精度を落とすことなく、自らのスタイルをじっくりと掘り下げ続けているパペットマペット。もはや単なるアンダーグラウンド芸人の輪から抜け出して、芸の味で観客を魅了する演芸場系統の芸人らしさが滲み出てきた(別にウシくんとカエルくんが汚れてきたわけではない)。これから更に、その笑いのスタイルに味わい深さが生じてくるだろう彼の活躍に、今後も期待していきたい。……前の単独(『擬態』)スルーしていたけど、ちょっと気になってきたな……。

特典映像には、ライブで披露された幕間映像やホームページで集められた質問企画、特別ゲストを招いたスペシャルトークなどが収録されている。あくまで個人的な意見だけど、こういうのは本編に収録しておいた方が、ライブの様子をより再現できるので良いのではないかと思うのだが……うーん。ちなみに、スペシャルトークのゲストは全八公演それぞれ違うゲストが招かれた模様。今作には空手家の小林由佳映画監督の河崎実とのトークが収録されている。『いかレスラー』『かにゴールキーパー』などの着ぐるみ作品を監督している河崎監督と、人形的な意味で盛り上がるパペットマペットの姿は、なかなかに奇ッ怪だった。ちなみに、河崎監督による新作『猫ラーメン大将』は、パペット人形を駆使した作品だという。次回作にはパペマペが採用か!?


・本編(約48分)

『記者会見』「オープニング」『カエルのアルバム』『落語』『かくれんぼ』『サトリウシ』「エンディング」

・特典映像(約82分)

「4コマ漫画」「うしの寝起きドッキリ」「パペットファイター」『緑神様』『スペシャルトークゲスト「空手家:小林由佳」』『スペシャルトークゲスト「映画監督:河崎実」』『ショートコント その1』『ショートコント その2』

※ちなみに、この七日間のトークゲストは「尾辻舞tvkアナウンサー)」「エレキコミック今立」「小林由佳」「河崎実」「林家彦いち」「江戸むらさき」「鉄拳」「ライセンス藤原」の八組(全八公演)。ライセンス藤原? ……あ、『爆笑問題のバク天!』繋がりか。