『Rahmens 0001 select』下
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2002/08/21
- メディア: DVD
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- DVD解説2
- 『男女の気持ち』(from『雀』)
- ラーメンズのコントは一般的に、独自の世界観を切り開いたコントばかりだと思われがちだが、実はテレビや映画といった媒体をパロディしたコントも少なくない。過去の作品では、『インタビュー』(from「椿」)や『映画好きのふたり』(from「home」)などのコントに、パロディの要素が多く盛り込まれている。この『男女の気持ち』もまた然り。先のコントでは、声優や海外映画をパロディしているが、このコントではいわゆる恋愛ドラマのパロディが多く盛り込まれている。特に最初、小林賢太郎が演じるキ○タクっぽいキャラクターは完成度が非常に高い。それ以外の場面でも、いかにも昔の恋愛ドラマに登場しそうなキャラクターが登場し続けるが、それらのパロディも秀逸の出来。こういう、ちょっとしたパロディにも全力を注いでいる木目細かさこそ、ラーメンズの人気が長く続いている理由なのかもしれない。
- 『タカシと父さん』(from「零の箱式」)
- 小林賢太郎は『つくるひと凸』にて、コンビの相方に片桐仁を選んだ理由を「瞬発力」と語っているが、このコントを見ると、その片桐の瞬発力というのが、よく分かる。台本を書いているのは恐らく小林だろうが、これは片桐にしか出来ない。もしも、同じことを小林がやったとしても、片桐以上の笑いを見出すことは出来ないだろう。これは、理性的な雰囲気を醸し出す小林ではなく、野性的に生きているように見える片桐でなくては、成立しないコントなのだ。その辺りを小林も十二分に理解しているらしく、ちゃんと片桐演じる父さんが発しそうな台詞を選び抜いている。しかし、それだけでは糸の切れた凧のように自由になりすぎてしまうため、このコントには「タカシに構ってもらうために暴れまわる父親」という設定がある。それ故、このコントは地に足が着いたものとして成立しているのだ。舞台で勉強しているだけの小林も、ちゃんと必要な存在なのである。
- 『日本語学校アメリカン』(from「椿」)
- 日本語学校の授業風景を描いた、ラーメンズの代表作「日本語学校」。このシリーズは当初、外国人による犯罪を皮肉った風刺コントだったが、その後、日本語の持つ独特のニュアンスをパロディしたコントに変化していく。この『日本語学校アメリカン』は、当時における「日本語学校」の最新作であり、タイトルの通り、アメリカ人のノリを用いたコントになっている。ただ、この『日本語学校アメリカン』はこれまでの「日本語学校」とは違い、歴史上の人物や出来事を駄洒落にしたものになっており、それまでのものよりもナンセンスさが弱まっている。しかし、その駄洒落が異常に研ぎ澄まされたものであるため、ネタのクオリティは落ちていない。この頃から、彼らの中の言葉遊びの傾向が変わっていったのかもしれない。
- 『器用で不器用な男と、不器用で器用な男の話』(from「鯨」)
- 『プーチンとマーチン』(from「FLAT」)
- このコントに登場するプーチンとマーチンは、間違ったことばかりを喋り続けている。互いに間違ったことを受け入れ続けるばかりなので、それが何処かで止まることはない。それを見ている観客は、「バカだなー」と思いつつも、その二匹のやりとりをニヤニヤと見守ってしまう。その理由は恐らく、この二匹の間違った方向に進み続ける会話が、幼い子供が友達同士で間違った思考をめぐらせている、そんな微笑ましい様子を髣髴とさせてしまうからだろう。その間違った方向性も、ラーメンズらしいナンセンスなエッセンスに満ちていて、良い。ストーリーが非常にシリアスな『無用途人間』で始まり、このナンセンス尽くしの人形劇『プーチンとマーチン』で終わる、この『Rahmens 0001 select』。非常に良い後味でございました。〆。