菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『モエヤン まるだしヤッホー! ~タイツからヘアー~』

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(2009/02/20)
モエヤン

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ショートネタブーム全盛の今日。若手芸人たちに求められていたのは、その面白さよりも個性的な芸風であった。若手芸人の誰もが印象に残るフレーズ、キャラクター、スタイルを追い求めていた。そんな時代の中、とある女性コンビが注目を集め始めた。彼女たちの名は、モエヤンだ。

モエヤンの芸風は、とにかく変わっていた。まず、その衣装。彼女たちはネタを披露するとき、往々にして、それぞれ赤色と青色の全身タイツを身につけていた。女性が全身タイツを身につけるということは、そのボディラインが露わになるということである。これはお笑いの世界において、決して良い演出とは言えない。女性芸人には、その性的な部分を少しでも匂わせてしまうと、笑いが起こりにくくなってしまう傾向があるからだ。

しかし、モエヤンのネタにはそういう性的な雰囲気が、まったく感じられなかった。その理由は、恐らく彼女たちの全身タイツという衣装が醸し出す性的な雰囲気が滲み出るより先に、“モエヤン”というコンビのキャラクター化が成立したためではないかと思われる。お笑いの世界には、たびたびキャラクター化した芸人が登場する。過去の例を見ても、赤ジャージと青ジャージの音楽コンビとして知られているテツandトモ、パーティスーツに身を包んでジョークを連発するダンディ坂野、貴族を自称する髭男爵など、その数は決して少なくない。モエヤンも、そのグループの中に上手く滑り込んだわけである。

そんなモエヤンが此度、初の単独DVDをリリースした。タイトルは『まるだしヤッホー! ~タイツからヘアー~』。三流アダルト雑誌のキャッチコピーみたいなタイトルだが、既にキャラクターが確立されている彼女たちのこと。下手なことをして、大怪我をするような失敗はしない。だから大丈夫だろうと思っていた。

甘かった。まさか、ここまで派手に大失敗してくれるとは、思ってもみなかった。一応、値段があまりにも安かったので、それなりに酷い内容になるかもしれないとは予想していたのだが、その予想をあっさりと飛び越えてしまうほどに、酷い内容だった。

まず、何が酷いって、ネタが酷かった。先にも書いたように、モエヤンは既に「全身タイツの女性二人組」というキャラクターが成立しているので、それだけをイジるだけの内容だったとしても、そこそこ見られたものにはなっていた筈なのだ。

なのに、今作で彼女たちがしていることと言えば、やれ相方に変な化粧をするだけのコントだの、やれ男のパンツをずり下ろして「ノーパンヤッホー!」だの、やれエキストラ出演している人たちにもずく酢を飲ませて苦しめるだの(注:自分たちは飲まない)、何がしたいのか分からないことばかりをやっている。本当にこれを面白いと思ってやっているのか、ひたすら疑問符が頭に浮かぶ映像がだだ漏れるだけの時間が続いた。

ネタ以外の部分も酷かった。ネタ中にでっかい字幕を流したり、派手なBGMを加えたり、カメラワークが五月蝿かったりで、もうシッチャカメッチャカ。幕間に挿入されたトークも、話術が無いからキャンキャン五月蝿いわ、下ネタばっかり披露するわ、どうしようもない内容。これが“笑魂”シリーズよりも高値で売られてるってんだから、笑うしかない。全てを見終わった後は、なんだか知らないが背中が痛くなってきた。これは単に猫背だからか。うーん。

“全身タイツに身を包んだ二人組”という特異なキャラクターを演じることで、このショートネタブームの時流に乗ることに成功したモエヤン。しかし、彼女たち自身は、どうしてこのブームに乗ることが出来たのかを、あまり理解していなかったようだ。もし理解していたら、こんなにムチャクチャな作品を世に送り出していなかっただろう。というか、理解していなくても出すな!


・本編(48分)

「オープニング」『ルージュさん』『男のバカヤロウ』「Talk1」『ノーパンヤッホー』「ロケ(巣鴨歩き)」『チョリチョリシスターズ1』「ロケ(池辺を探せ)」『Quizもずく酢ヤッホー』『チョリチョリシスターズ2』「ロケ(トイレ)」『ノーズラヤッホー』「Talk2」『コリア★リズム』「ロケ(あらかわ遊園)」『ぶっかけ占い師』「Talk3」『わっしょい毛だらけヘア音頭』