菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

「鯨」(ラーメンズ第9回公演)

ラーメンズ第9回公演 『鯨』 [DVD]

ラーメンズ第9回公演 『鯨』 [DVD]

 

●「ことわざ仙人」
ことわざ普通免許を取りにきた男の前に現れたのは、ことわざ仙人と呼ばれる髭の男だった……というコント。小林の言葉遊びが前面に出ているコントで、タイトル通りことわざの弄り方が巧み。「孫にも衣装、ひ孫には現金、やしゃごには圧力を」「武士は食わねど救援物資が届かない……いらねーよ、爪楊枝なんて!」の引っ張り具合は尋常ではない。こういう言葉の遊び方をしたいと思う、今日この頃。

 

●「超能力」
超能力が使えそうな男と、使えなさそうな男。超能力を使えない二人は、超能力が使えるようになりたいなあ、と思っている。ところが、超能力が使えなさそうな男は超能力が使えるらしい……というコント。どんでん返しにどんでん返しにどんでん返しが重なって、意外性満点のコント。最後のほうの演出は流石。

●「バースデー」
今日が誕生日の男が、ズボラな男の持ってきた紙袋の中身を気にするコント。殆どが登場人物の心の声で構成されていて、その声に合わせて二人が身体を動かすという、ある意味で斬新な設定。セリフが勝手に流れているだけ動きに余裕が出来るのが良い。そのため、他のコントよりも動きがキビキビしている。マイムが素晴らしいです。

●「壷バカ」
壷を持った二人が壷の中身で遊ぶコント。マイムメインな点は「バースデー」と似ているが、こちらは動きと効果音のみ。そのため完全に動きのみで笑わせている。また、唯一の効果音である「壷の中身を受ける」という部分が、より効果的なモノになっている。それにしてもオチが少し下ネタ寄りな気が。

●「絵かき歌」
絵かき歌を歌いながら、地面に絵を描いている男。絵描き男の兄貴的存在の男。二人は普通の人間のように見えたが、実はこの世界の人間ではなかった、というコント。ラーメンズらしい、不思議な世界観のコント。無意味で不条理。コント終りには妙な清涼感があり、じっくり楽しめるコントだとも言えなくもない。

●「count」
物を数えるコント。数字関係は前公演の「ドラマチックカウント」があるが、それよりもシンプルに、物の数(一人、二人、一人と一匹など)が先に公開され、その後に舞台上で数字を二人が表現する感じになっている。こちらも一発勝負なところがあり、何度も観られるタイプのコントではない。

●「アカミー賞授賞式」
アカミー賞という賞の授賞式の様子。珍しく、片桐が客席にいるコント。やや外国人口調の小林のテンションも面白いし、その小林よりずっとハイテンションの片桐も面白い。そして受賞された作品の内容も面白い。とにかくやたらと面白い。オチも最高に好きです。ああ、褒める事しか出来ないなあ。お肉! お肉!

●「器用で不器用な男と不器用で器用な男の話」
コミュニケーションに器用だけれど、お金に不器用な男。お金に器用だけれど、コミュニケーションに不器用な男。二人の男のある日の出来事。ラーメンズ近年のコントの中でも珠玉の作品。前半はしっかり笑わせてくれるし、後半はキッチリ泣かせてくれる。才能が無いから実家に帰るという片桐にも同情できるし、それを止めて頑張ってほしいと思う小林にも同情できる。二つの気持ちの中で葛藤する客。泣かずにはいられません。

・総評
前公演「椿」の延長線みたいなコントもあるけど、全体的に演劇志向になりつつある雰囲気がなんともかんとも。その葛藤が見え隠れすることは無いけれど、これまでのラーメンズが違うカタチになってきているという感じ。特に最後の「器用で…」は、後々の演劇スタイルの根源になっている。ここからラーメンズは変化する。