菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『バイきんぐ単独ライブ「エース」』

バイきんぐ単独ライブ「エース」 [DVD]バイきんぐ単独ライブ「エース」 [DVD]
(2013/09/25)
小峠 英二、西村 瑞樹 他

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キングオブコント2012』覇者、バイきんぐが2012年6月27日・28日に北沢タウンホールで開催した単独ライブ「エース」より、28日の公演を収録。

ベストネタばかりを収録していた前作『King』は、その濃度の高さがために、鑑賞中に食傷してしまったのだが、今回はオール新ネタの単独ライブということで、様々な手法のコントが演じられていて、最初から最後まで存分に楽しむことが出来た。多少の良し悪しの差はあれど、どのコントの完成度も非常に高く、キングオブコントの名に相応しい実力を見せつけていたように思う。ただ、惜しむらくは構成が少し甘い。最後に長尺のコントを一つ見せてくれていれば、より満足感の残る仕上がりになっていたのではないだろうか。……あえて、無理をせずに外したとも考えられるが。

バイきんぐのコントといえば、「なんて日だっ!!!」に代表される、小峠が繰り出す至高のパンチラインが魅力的だが、本作に収録されている様々なバリエーションのコントを観ていて、その魅力はむしろ小峠当人が放っているということを改めて感じさせられた。本作において、小峠は実に様々な表情を見せている。ある時は激昂し、ある時は驚愕し、ある時は静かに苦笑する。それらの表情には、いずれも小峠にしか出せない風味がある。芸歴17年の深みが、その顔つきに反映されているのではないかと思われる。

……一方、小峠の相方である西村の表情には、芸歴の深みがまったく感じられない。彼もまた本作において様々なキャラクターを演じているが、その演技はどれも非常に浅い。本当に小峠とともに芸人としての人生を歩んできたのかと疑ってしまいたくなるほどに、浅い。しかし、そんな彼が相方であるからこそ、小峠の味わいが引き立てられているといえるのかもしれない。深みの小峠と浅みの西村。なんとも素晴らしいバランスのコンビではないか。

本作イチオシのネタは、やはり『ポイントカード』だろう。“雨の日になるとサービスでポイントが2倍になる”という触れ込みのドラッグストアを舞台に、融通の利かない店員の西村とポイント2倍に固執し続ける客の小峠の攻防戦を描いたコントで、ボケとツッコミが混在とした二人の関係性がたまらなく面白かった。平然と対応を改めない西村に対して、“雨の日サービス”に対する思い入れを熱く語る小峠の振り切れた狂気がたまらない!

だが、個人的には、『BAR』をオススメしたい。バーテンダーの西村が初めて店にやってきた客の小峠にオリジナルカクテルを作るのだが、シェイクにあまりにも時間をかけ過ぎるので、延々と放置され続けている小峠が少しずつやきもきし始める……という内容のコントだ。そのしつこさを全面に押し出したシチュエーションは、明らかにジャルジャルジグザグジギーの存在を想起させるものなのだが、しっかりとバイきんぐのコントとして昇華されている。バイきんぐというコンビの実力を確かめられるという意味で、一見の価値がある一本といえるだろう。

特典映像には、ライブの幕間に使用された『はじめてのピクニック』を収録。二人が雨の中をピクニックに出掛けるだけの映像なのだが、純真無垢にピクニックを楽しんでいる西村と、最初はその気がなかったのに、西村が準備したバドミントンやしゃぼん玉につられて少しずつ楽しくなっていく小峠のやりとりが、なんとも和やかで良かった。この二人の距離感が、そのままコントにも反映されているんだろうなあ。


■本編(58分)

「バット」「ポイントカード」「AD」「賄賂」「BAR」「万引き」「お見舞い」「質屋」「有休」

■特典映像(22分)

「幕間映像「はじめてのピクニック」」「DVDジャケット撮影風景」「エンドトーク&「エース」テレビCMの裏側」「「エース」テレビCM」